人事戦略
出演者
HRエグゼクティブコンソーシアム
代表
楠田 祐 氏
株式会社メルカリ
Mercari JP
HR Director
山本 真一郎 氏
アメリカの大学院を修了後、新卒でP&Gジャパン人事部に入社。工場人事責任者や日本/韓国の人材開発責任者などのHRリーダー職を担う。その後、J&Jジャパンでの事業部人事責任者を経て、2017年GEヘルスケアジャパンに入社。アジア太平洋地区の事業部人事責任者や日本の組織人材開発およびHRBPリーダーを務める。2021年7月にメルカリJPのHRディレクターとしてメルカリに入社。
3つのバリューが
人事・組織面に密接に結びつく。
- 楠田
- 今回、メルカリさんにお伺いする「人事的課題と挑戦」ですが、今、メンバーシップ型からジョブ型への移行を検討している日本の企業・人事部はたくさんあります。ただ、私は制度を変えることだけではなくて、カルチャーをどう作っていくかも論点になるのではないかと思っています。ぜひ、カルチャーをどうやって作り、浸透させていくのかの部分も含めて山本さんにお伺いしたいと。それでは、メルカリの簡単な紹介から、よろしくお願いいたします。
- 山本
-
はい、よろしくお願いいたします。私たちメルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」ことをミッションとして掲げております。会社の設立は2013年の2月。オフィスは現在、東京、仙台、そして大阪。そして、こちら福岡のPaloalto。また、アメリカではボストンとポートランドにオフィスを構えており、現在の社員数は約1700名です。人事・組織面に関してお話しますと、そこに大きく関係しているのが「バリュー」というもの。メルカリの中でも非常に重要視をされているもので、個人的にはメルカリの根幹を担っていると言っても過言ではないと思っております。メルカリは3つのバリューを掲げておりまして、1つ目が「Go Bold 大胆にやろう」。一人一人の社員が大胆にチャレンジをすることで、それを通じて初めて、社会に大きなインパクトを生み出せることができるよね、と。なので、小さくまとまるのではなくて、大胆にやっていきましょうというところを掲げております。
もう1つが「all for One 全ては成功のために」。
一人一人のパフォーマンスには限りがあるけど、チームの力を引き出し、力を合わせて結果を出していけば、一人で出す結果よりも大きな結果を得られます。それがひいては社会に大きなインパクトをもたらすことができるという考え方です。
最後が「Be a Pro プロフェッショナルであれ」。
メルカリに所属する社員一人一人が、プロとしての矜持を持って、そして研鑽に励むと。たとえば、人事部の社員も自主的に様々な専門分野で勉強をしております。獲得した知識は社内で使っているチャットのシステムを使ってナレッジが共有され、それを機にまた議論が深まり、推薦図書が出てきて……という形で循環していくのです。
多様化する組織をまとめる
「Trust & Openness」というカルチャー
- 楠田
- 3つのバリューが「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションに紐づいているわけですね。
- 山本
- はい。また、バリューに関連する部分でカルチャーというものがあり、メルカリは「Trust & Openness」というものを掲げております。「Trust=相互の信頼」と「Opennes=透明性」。開かれたコミュニケーション、開かれた情報共有は、一人一人の多様性を活かしていくためには欠かせないものです。社員同士の関係だけではなく、組織階層もできるだけなくし、関係性をフラットに保ちながら、それぞれの力が最大化されるような仕組みづくりをめざしています。
- 楠田
- 事業面を見ると、メルカリは創業9年で時価総額が1兆円を超えましたよね。大きく進化する事業規模と組織も多様化してくると思うのですが、そのあたりについてお聞かせいただけますか?
- 山本
- おっしゃる通り、組織もどんどん多様化してきております。1700名の社員が世界中で仕事をしている状況ですので、我々としても、この組織の多様化というところは非常に重視しております。具体的に数字を申し上げますと、すでに40か国以上からの国籍の社員が所属をしており、日本のメルカリ事業の東京オフィスのエンジニアにおいては、半数以上が外国籍の社員です。非常に国際化も進んでいると同時に、様々な価値観やニーズを持った多様な個人というのが所属している組織といえるでしょう。
- 楠田
- 国際化を含めた多様化が進むなかで、コミュニケーションを円滑にするためにどのようなことをされているのでしょうか。
- 山本
-
コミュニケーションの部分も非常に力を入れており、先ほど申しましたカルチャーの「Openness」に基づいて「オープンに共有できる仕組みや取り組み」をたくさんしております。その一つが、個人と個人のコミュニケーションにおける「優しいコミュニケーション」という取り組みで、これは、メルカリの人事部のL&Tチームが推進をしているもの。
たとえば、日本語話者にとっては普通のコミュニケーションでも、非日本語話者にとっては難しい日本語ってありますよね。過剰な丁寧語や難しい慣用句を極力回避して、平易な日本語、短い文章を使い、非日本語話者にとってもわかりやすい日本語を喋りましょうということで、これは英語のコミュニケーションにおいても同様で、それをスキルとして提供しているのです。こうした取り組みの根底にある考え方が「Openness」であり、多様性を重視した組織の風土というところと結びついているのだと考えています。
- 楠田
- 組織として多様性を重視する風土が根付くことで、事業にはどのような効果が生まれていると考えていますか?
- 山本
- 我々のアプリサービスは多様なお客様にご利用いただいております。それは同時に多様なニーズももっていらっしゃるということ。今後、さらなる海外展開などを見据えた際、多様な文化・多様な社会にも受け入れていただく必要がありますので、そのためには、メルカリという会社で働いている我々一人一人も、その多様性を尊重して、インクルーシブ、包括的なマインドと態度で行動することが求められていきます。ですので、組織全体として、この多様性に対する需要度を上げていくこと、高めていくことは、ビジネスのためにも組織のためにも、そして社員のためにも、非常に重要な取り組みとなっております。
- 楠田
- ありがとうございます。「優しいコミュニケーション」の他にバリューやカルチャーに紐づく特徴的な制度があれば教えていただけますか。
- 山本
- 働く環境における象徴的な制度で「merci box」という題名で、諸々の福利厚生にまつわるサービス、施策というのを展開しております。これはバリューの「Go Bold」と非常に密接に結び付いている考え方です。「Go Bold」には、仕事中は仕事にしっかり打ち込み、結果を出して、それを社会へのインパクトにつなげて欲しい。また、メルカリというステージを使って、社員自身が望む自己実現やキャリアの実現を目指してほしいという思いが込められていますが、一方で、大胆に挑戦をしていくためには、その裏で挑戦を支える保証や安心の提供も不可欠だと考えています。「merci box」は、仕事に打ち込む上で生まれる懸念点や心配事に対して、しっかり福利厚生としてサービスを提供していきましょうという考えで実施されています。最近では、不妊治療に対するサポートや卵子凍結に対する金銭的なサポートも導入しており、社員のニーズを踏まえながら、常にGo Boldに社員が働いていけるような福利厚生のプログラムを更新していきたいと考えています。
- 楠田
- 社員のニーズをきちんと捉えて制度設計するためには、社員の状況や環境、思いみたいな部分を吸い上げる制度や仕組みが必要かと思いますが、そのあたりは?
- 山本
- 定型的な施策としましては、1つは全社員サーベイを導入しており、社員の情報など様々な項目において我々が知りたいと思うことを聞いています。これは四半期に1回やっていて、その中でどういった項目が、出っ張っている・凹んでいるとかを見ています。自由記入のコメント欄からも意見を吸い上げています。もう一つは、たとえば「merci box」を担当している、Employee Experienceのチームというのが、たびたびOpen Doorとかもやっておりまして、
- 楠田
- なるほど。
- 山本
- 人事制度企画等もOpen Doorをするのですが、人事施策についての質疑応答会もやるんですね。そこで制度についての質問も出るんですけど、同時に「こういうことはないんですか」とか「こういうニーズに対して何かできないですか」といった要望も上がってくる。全てのニーズに応えることはできないですけれども、メルカリとして、この考え方に沿う意味でサポートすべきというものが出てきたときには、検討を始めるという流れになっています。
社員にも「Customer Journey」を。
メルカリの「Employee Experience Journey」とは?
- 楠田
- バリューやカルチャーについて触れていただきましたが、人事部におけるミッションについても伺えればと。
- 山本
-
メルカリの人事部(People & Culture)は、「メルカリグループの事業成長のために組織と人材のWIN-WINを最大化する」というところをミッションに掲げています。事業成長のためには、ビジネス側のニーズだけではなく、人材のニーズも満たされる必要があります。この2つを、二者択一で考えるのではなく、双方に対してWIN-WINを提供していくという考え方です。我々も、3つのバリューに基づいて人事施策に取り組んでおり、まずは「Go Bold」。人事の領域において大胆な取り組みをしっかり実現していくというところですね。「All for One」については、全社員がしっかり力を出していけるように、多様な社員との対話を重視しています。最後「Be a Pro」。我々人事も組織の一端を担っていますので、人事のプロとして成果を出し、同時に向上し続けるというところを掲げています。また、
我々が日本における先進の人事事例を仕掛けていくことで、少しでも他社さんの参考になったり、社会に対しての問題提起につながれば、社会へのポジティブなインパクトというのも与えることができるのかなと、僭越ながらそのようなところを目指しております。
- 楠田
- People & Cultureのミッションを実現していくためにロードマップのようなものは描かれているのですか?
- 山本
-
はい、ビジネス面同様、
People & Cultureの中でもロードマップを描いております。少し長い将来、遠い将来を見ながら、我々はどこに向かっているのかというようなロードマップを描いて、そこに対して隔年のアクションプランをOKR(Objectives and Key Results)で落とし込み、実践をするという建て付けになっています。
いくつか取り組みをご紹介させていただきますと、一つは「Culture Doc」というもの。
これは、言語化された文化に関する規定で、我々が会社として、そして社員相互が大切にしたいと思っている文化的な基盤を書き記したものになっています。多様性がすでに溢れている組織の中でさらにそれを進めている中で、「私は私、あなたはあなた」ではなく「あなたの個性、私の個性」というところを融合して、一つの目的に向かって推進をしていくためには、やはり文化的な基盤というところで結び付いている必要がありますよね、という考え方です。
もう一つが、今まさに、取り組んでいる「Employee Experience Journey」。
社員体験をしっかり言語化して提供していこうというもので、下の赤い部分(※図参照)が、我々のサービスを使っていただくCustomer Journeyを表示したもの。それと対をなす形で、社員のJourneyも我々の中で考えているというのがこのモデルです。まずはメルカリという会社に興味を持っていただいて、入っていただく、入社後も魅力を感じていただくという部分のAttract。その過程で、能力を開発したり、キャリアを開発して成長をしていただくというDevelopフェーズ。最後は、成長していただいた社員の方が働き続けていただけるように、しっかりとRetainしていきましょうというところです。こうしてメルカリ社員としての一連の流れをJourneyとして描いて、それを細分化していているのです。たとえば、入社後のオンボーディングで我々はどういった体験を提供すれば彼らにしっかり満足をしてもらいながら、パフォーマンスを出していただけるのか。こういったところを考えながら、一つ一つの人事のフェーズを設計していると、いうのがこの「Employee Experience Journey」です。
プロダクト思考のアプローチで、
人事制度にもUI/UXを意識する。
- 楠田
- 「Employee Experience Journey」をきちんと実践するために重視している点はどこですか?
- 山本
-
私がこの会社に入社して「お、すごいなぁ」「面白いなぁ」と思ったのが、
ビジネス同様、会社組織に対しても、プロダクト思考という考え方をしているところです。要は、人事制度を提供する際、それを使ってもらう社員にとって「その使い心地がどうなのか」「使った体験がどうなのか」というところを徹底的に考えます。いわゆるユーザーインターフェース、ユーザーエクスペリエンスに呼応するような、
Employee Interfaceとか、Employee Experienceっていうのも非常にこだわりを持っていて、人事制度の設計等がされている。ですので、制度やプロセスは細部まで作り込みますし、経営陣からも細部までフィードバックがきます。社員の説明資料等も、本当に充実した内容になっておりまして「言語化へのこだわり」というふうに書いておりますけれども、誤解がないように、本当に多様な社員がしっかり読んで理解できるような内容に仕上げています。また、1回説明会をして、「あとはよろしくお願いします」ではなくOpen Doorと呼ばれる仕組みも取り入れています。たとえば、人事部の提供するOpen Doorに社員の方に参加していただいて、
新しい人事制度に対して対話をし、そこから社員の声を取り込んで、制度のアップグレードにつなげていくような試みです。こうした取り組みもプロダクト開発のアプローチに非常に近いと思うのですけれども、私自身も非常に面白いなと思いながら、一緒に皆と働いているところです。
- 楠田
- 働き方についても新しい取り組みはありますか?
- 山本
- そうですね。「Your Choice」という取り組みで、要はどこで働くかは「Your Choice」ということです。ただし、それには責任が伴いますよと、併せて理解してもらった上で、社員がしっかり会社に対して貢献できて、パフォーマンスを発揮できる環境の中で住む所を選んでくださいという形です。ですので、1日も会社に来ずに仕事をすることも議論的には可能になっています。
- 楠田
- なるほど。
- 山本
- また、「Employee Experiencece Journey」の数値化も取り組んでいる施策の一つです。もちろん各施策は、数値目標等を設定しながらやっていますが、この「Employee Experience Journey」をすべて数値化してデータを整備できれば、データをもとにした客観的な評価や制度へのフィードバックも可能になっていくのかなと。
言語化へのこだわりが
様々な取り組みの成功へつながる。
- 楠田
- 大変分かりやすいストーリーですね。一方で、メルカリさんはキャリア入社のマネージャーも多いと思うのですが、そのあたりで温度差は出ないのですか?
- 山本
- そうですね、ですので継続的に取り組み続けているというのは非常に大事にしています。
- 楠田
- なるほど。できている、できていないはまた別だけども、でもそこに向かうんだっていうことを、全社員が知っているのであれば。
- 山本
- はい、だんだんよくなっていくと。私自身も、21年7月入社して、チームのメンバーからフィードバックをいただくこともあるんですけれど、ハッとさせられる瞬間というのは何度もありました。
- 楠田
- ハッとさせられる瞬間。
- 山本
- はい。それが、先ほどのGo Boldにつながるところで。私も試されているなと思うのは「もうちょっとGo Boldにいったほうがいいんじゃないですか?」と、常に社員から期待されているのを感じるところですね。私なりに一生懸命、働いているつもりではいますけれども、「もっとGo Boldにできるためには、どう態度を変えたらいいのか」、「チームメンバーがよりGo Boldに仕掛けていけるために、マネージャーとして変わるべきところはどこなのだろう」といったことを自然と考えさせられるような環境がありますね。もちろん、OKRだけではなく、1on1を徹底的にしっかりやるというのは前提ですが。
- 楠田
- それがないと難しいですよね。日々話していないと。
- 山本
- 1 on 1は、本当に基礎として入っていますね。上司部下はもちろん、HRと社員もやっていますし、メンバー同士もですね。
- 楠田
- この対話するカルチャーがないと、「大胆にやろう」っていうのが、絵に描いた餅になる。
- 山本
- おっしゃる通りだと思います。
- 楠田
- 企業の人事の中には「1 on 1やっているとだんだん1wayになってしまう」「在宅勤務が続くと重箱の隅を突付くマネージャーが増えてきてしまう」っていう悩みを抱えている方もいらっしゃると思うんですけど、メルカリではそうならない?
- 山本
- ならないですね笑。これだけが答えではないと思いますが、一つお勧めしたいのは、全てを言語化していくところかなと。
- 楠田
- たとえば?
- 山本
- メルカリは言語化へのこだわりが強い会社でして、先ほど出た「Culture Doc」とかも全部言語化されているんですね。もちろん1 on 1の履歴っていうのも全部言語化されているんです。たとえば、私とメンバーの1 on 1というのも、過去から全て履歴を残しているんですよ。
- 楠田
- すごいですね。
- 山本
- ですので、1 on 1が始まる前に、今日話したい議題は全て入っている状態です。その中で30分の中で、どれがプライオリティーかな? というところで優先度の高い項目から話をしていくと。
- 楠田
- なるほど。
- 山本
- 話したものを全部そこに議事録として残し、アクションがあれば「これは誰々がアクション」とハイライトをして終わるというような形になっています。
- 楠田
- 1 on 1はリセットボタンがないと1Wayになりがちですよね。
- 山本
- そうですね。私もこの会社に入って学ばせていただいたところで、議事録のリンクが、常にその1 on 1のカレンダーに貼り付けてあるんですね。オンラインツールを立ち上げると、まず議事録が出て、議事録と顔を見ながら1 on 1を行うというやり方です。
- 楠田
- キャリア入社の山本さんも、入社後はそうしたカルチャーに触れてきたということですよね。
- 山本
-
私は昨年の7月1日に入社して、オフィスに行ったのはまだ10回以下(笑)。基本的にはチームメンバーや上司も含めて、リモートでやり取りしているんですね。リモートでの入社っていうのは非常に不安だったんですけど、私のオンボーディングに対してはメンターが付いていて、その方がしっかりオンボードできるように責任持ってお手伝いをしてくれました。
- 楠田
- 山本さんにもメンターがいるんですか?
- 山本
- はい。入社時に私のオンボーディング用の資料はすでに作られていて、初日は何をする、2日目以降はこの人たちと1 on 1をする、とかですね。事業戦略に関する資料はこれ、組織ごとの戦略はこれを選んでください、組織図はこうなっています、キーマンは誰ですとかですね。
- 楠田
- すごいですね。
- 山本
- 要は入社してから聞きたかったことは基本的にそこに載っていて、最初の2週間くらいは1 on 1しながら、「今日はこういうことがあって」「次はこういうこと知りたいんですよね」って言ったらそれをサポートしてくれたり、人をつないでくれたり。
- 楠田
- 計画されたオンボーディングということですよね。カルチャーとして、新しく入ってくる人に寄り添っている。
- 山本
- 形式知として伝えてくださるところも非常にありがたいですし、人間関係とかの無形のものをつないでくれたのも非常にありがたかったですね。
- 楠田
- マネージャーという視点で言うと、企業によっては技術の進化に伴い、マネージャーよりもメンバーのほうが技術を有している事例も増えてきますよね。そうするとミドルマネジメントが効果的な評価フィードバックができない、という課題も生まれてくると思うのですが、メルカリさんでもミドルマネジメントにおける課題はありますか?
- 山本
- メルカリは、私のようにキャリア採用で入ってくるマネージャーの方が多いんですよね。そういった方々は、入口の時点でいわゆるラーニングアジリティが身についているかは厳しく見させてもらっています。ですので、マネージャーがメンバーについていけないというようなことは起こらない、というのが基本的な考え方です。
- 楠田
- スキル面についてはいかがですか?
- 山本
- マネジメント能力という意味では、私も含めて課題を抱えていると思っています。1つは初めてマネージャー経験をする方について。メルカリも新しい会社ですので、その中で初めてマネージャー登用された方も当然おりますし、全員が必ずしも上手くマネジメントができるというわけではありません。ただ、メルカリで求めているマネジメントは、厳密な管理ではなくチームをリードすること。そこを細かく言語化して、「メルカリにおけるマネージャーとは」という部分をさらに詰めていくのが我々人事に求められることだと考えています。もう一つの課題は、キャリア入社の方がこれまでのマネジメントスタイルを踏襲されるケースですね。
- 楠田
- それは多いでしょうね。
- 山本
- はい。これは今から取り組む部分ですが、やはり「メルカリにおけるマネージャーとは」という役割定義をいかに作るか。
- 楠田
- 当社はこういう考え方ですけどやってみますか? そのように変わるにはあなたには何が足りませんか? ということをやっていくということですよね。
- 山本
- そうですね。同時に、多くの方がプレイングマネージャーですので、プレイングの部分で結果を出していただくというナチュラルな中で研鑽を積んでいただく。あとは、外部の研修も含め、トレーニング等のサポートをしているというような状況かなと思います。
パッチワークではなく、
全ての施策を一つの大きなデザインとして描く。
- 楠田
- これまでに出てきた「Your Choice」や「merci box」という言葉はシンプルで分かりやすいですよね。こうした言葉は誰が考えているんですか?
- 山本
- ほぼ自社で考えています。
- 楠田
- 外部ではなく?
- 山本
- もちろん外に出すものは、外部の方に頼む場合もありますが、メルカリはカルチャーとして広報やブランディングを社内で力を入れて取り組んできている会社なんですね。たとえば「mercan」という社内報のような記事も外部に公開されていて、読み物としても非常に面白いですし。
- 楠田
- インターナルコミュニケーションですね。
- 山本
- そうですね。その辺りの広報の力というのが非常に大きいと思います。Your Choiceなどは、そうした流れを汲んで人事部から生まれた言葉ですので、やはり会社全体として言語化への意識は非常に高いのだと思いますね。
- 楠田
- 全ての施策や考え方がパッチワークではなく全体が一つの大きなデザインとして描かれていますよね。
- 山本
- そうですね。そういうところを目指していきたいですね。
- 楠田
- 今日、メルカリさんの話を聞いていて、やはり成長していく企業は、会社の成長とともに人事も成長しているんだなぁということを感じました。それには、やはり人事がプロフェッショナルな人じゃないとなかなか難しい。色々なことをいわばデザインできるということですね。冒頭に申し上げましたけど、やはり制度を作り変えるだけではなくて、カルチャーをどう作るんだ、っていうことも大事だと思います。
- 山本
- ありがとうございます。メルカリの取り組みが少しでも参考になればと思っています。私自身も、本日お話した内容に恥じないような成長というのを、組織としても個人としても続けていきたいなと思っております。本日はありがとうございました。
おすすめ
コンテンツはこちら
Recommend
NECなど東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後に1998年よりベンチャー企業社長を10年経験。会長を経験後2010年より中央大学ビジネススクール客員教授(MBA)を7年間経験。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。