採用活動
出演者
日本マイクロソフト株式会社
人事本部 採用グループ
新卒採用マネージャー
アクセノフ ユージン 氏
株式会社ワークス・ジャパン
ITソリューション部
コンサルティング2課
阪 真以子
ジョブ型雇用について
- 阪
- マイクロソフト様のジョブ型雇用はどのような制度で、どのように進めていますか。
- ユージン
- 弊社の場合、ジョブ型雇用という呼び方をしているわけではなく、簡単に言うと職種別採用です。元々中途を中心に採っていたこともあり、中途でのロールごとの採用を新卒も同じように当てはめていくというかたちです。特に新卒だから何か特別なジョブを用意しているとか、新卒に対して特別な期間を設けているということはしておらず、入社からその職種につけるかたちで全職種行っています。
- 阪
- 社員のジョブは、どれくらいのスパンでどのように決めていますか?
- ユージン
- 入り口はひとつのジョブについていただきますが、その後の成長の仕方は本人に全て委ねています。早い人だと2~3年で次のジョブに進み、長い人は同じ仕事を10〜15年やります。会社として人事異動する機能はそこまでなく、本人に委ねているのが特徴です。
- 阪
- ジョブを選ぶタイミングは定期か、公募かどちらですか?
- ユージン
- 後者に近いです。日本だけでなく海外法人も含めた全世界のポジションが常に見られるキャリアサイトがあります。そこで自分が目指したいポジションを見つけ、上司と面談を進めながら、そのポジションのマネージャーや活躍している社員に話を聞くことが日常的に行われています。
- 阪
- 評価のポイントは、成果に対してシビアに行われる場合と、他社との関わり合いも含め行われる場合だとどちらでしょうか。
- ユージン
-
大きく二つの評価の仕方があります。一つは自身の業績で、会社のビジネスや自分が与えられた数値目標に対してどれくらい達成できたかが評価の半分です。残りが定性的な評価で、弊社の場合それを三分割しています。一つ目は自身がどれだけ達成できたか、二つ目が他者に対してどれだけ貢献できたか、三つ目が他者の知見を活かしてどれだけ自分の仕事を効率化できたかになります。
他の人が7割8割まで行った仕事を自分のものにし、それを自分の仕事としてプレゼンすることが、寧ろポジティブで評価されます。これは私が以前働いていた内資の会社とは大きく異なる部分です。
- 阪
-
自身の力で達成できた部分のみ評価される印象でしたので、他者との関わり合いや、他者から吸収したことも評価に繋がるという点は面白いです。
評価自体は会社が一方的につけるイメージですが、ジョブ型雇用のなかでは個人も会社に対して選択できることがあるのでしょうか?
- ユージン
- 会社と個人の関係は、直接縦ではなく、斜めや横に近い関係性もあります。自分の仕事が評価されていないと感じた場合、違うポジションへ移ることも可能です。また、社員がマネージャーを評価する仕組みもあるため、自分の個を大事にしながら、キャリアを積んでいくことができるのが特徴です。
- 阪
- マイクロソフトのジョブ型は、日本法人と他国で違いはありますか?
- ユージン
- 日本と他国を比べた際の唯一の違いは、日本は少し余裕をもたせている点です。具体的には、新卒の場合は最初の1年は重い数値目標を与えず、一定の猶予期間を持たせています。それ以外は基本的には同じです。本当に同じ職種で入社していただきます。
- 阪
- 日本の学び方や、就職活動の違いに合わせて調整しているのですね。
- ユージン
- 日本はポテンシャル採用のため、いきなり20年選手と同じ評価をしてしまうと学生側は戸惑うと思います。ある程度マーケットのニーズに合わせて調整をしています。
マイクロソフトが新卒採用を行う理由
- 阪
- メンバーシップ制の日本で、あえて新卒採用を行っている理由や背景、時期をお伺いできますか?
- ユージン
- 新卒は以前から細々と20名程度の採用をしていました。4年前から急遽50名程度に増やし、そこから力を入れて毎年50名は採用しています。
- 阪
- アメリカでも新卒採用を行なっていますか?
- ユージン
-
アメリカは、職種によって大きく二つに分かれています。日本に多いビジネス系は中途が多く、経験者や、業界を理解している人を採用する傾向があります。一方で、エンジニア、特に最先端の優秀なソフトエンジニアは新卒の割合が大きいです。スタンフォードやMIT(マサチューセッツ工科大学 )など、トップ校の学生を毎年数百人採用しており、そういった新卒採用カルチャーは特にアメリカでは非常に強いものがあります。
日本ではそれほどエンジニア採用は多くないため、セールス職やテックセールス職で採用できるように、日本の新卒採用マーケットとアメリカの新卒採用のカルチャーをどう融合させるかをポイントに行いました。
- 阪
- 日本の新卒採用に期待している点は何ですか?
- ユージン
- 弊社の場合ビジネスモデルが大きく、ここ数年で変革をしています。そういった新しいものについていける力や、そこに求められるコンピューターサイエンスのスキルといった、ポジティブなエネルギーを期待しています。それらが職場に入ることで非常に活気づきます。さらに、弊社はダイバーシティ&インクルージョンというカルチャーを重視しており、平均年齢が上がらないためにも若い人を入れ、会社としての若返りを図っていくことも大事なポイントです。
- 阪
- 新卒で入ってくる学生は、新しいテクノロジーへの関心が高く、考え方がフレッシュだと感じますか?
- ユージン
-
中途と比較するのは難しいですが、学生のうちに新興ベンチャーや会社の立ち上げなど、大企業では経験できないようなことをされた方は、違うマインドセットがあり、リスクに対する姿勢も違ったものが出てきます。
そういう方を会社の中に入れることで社員の刺激になり、会社のカルチャーがどんどん良くなっていくと実感しています。
- 阪
- 若い力が入り組織が活性化する点が、新卒採用をする1番の理由ということがわかりました。
マイクロソフトのインターンシップ
- 阪
- 新卒採用の母集団形成の取り組みとしてインターンシップがありますが、対象学生、時期、内容をお伺いできますか?
- ユージン
-
インターンシップは基本的に大学3年生、もしくは修士1年生(翌々年の春に卒業する学生)を対象に行っています。だいたい年間、30~50名くらいの規模感で、2か月の長期就業型のインターンシップを組んでいます。
海外のインターンシップは、特にベンチャー等で既に経験している人の場合、1週間程度では物足りないと判断されます。長期で仕事をしないと会社の良さをわかってもらえないため、短くても2か月、通常であれば3か月と長期就業で行います。弊社の場合、国によっては1年行うこともあります。
3年ほど前から長期型インターンシップを日本で上手く機能させるために、非常に工夫をしています。
- 阪
- 日本でのインターンシップは、募集テーマやコースなど、配属先の部署を明確に分けているのですか?
- ユージン
- 完全に職場型のため分けています。マネージャー、メンターや指導者も決まっており、終了時には経営幹部に対して発表するプログラムです。
- 阪
- 一般的には、学生のスキルや経験がすぐジョブにマッチするのか、その職場の就業体験につながるインターンシップの提供ができるかが難しいかと思います。それに対してはどうお考えですか?
- ユージン
- 面接や事前の書類スクリーニングでイメージが湧いているかをお互い握ったうえで来てもらいます。そこが握れていないと途中で上手くいかない可能性もあるため、できる限り現実味を持って参加してもらいます。
- 阪
- 学生時代に経験や能力が無いと、マイクロソフトのインターンシップに参加するのは難しいですか?
- ユージン
-
能力よりも私たちは「姿勢」をみます。与えられた仕事でも、自立的に物事を達成したいか、他の人の期待を超えたいか、そういった姿勢が大事だと思っています。
書類や面接で、その人の姿勢を確認できるかが、選考を突破するきっかけとなり、その後の成長の重要なポイントになっていきます。弊社の場合「グロースマインドセット」という呼び方をしており、その点は非常に細かくチェックしています。
- 阪
- インターンシップの報酬をお伺いすることは可能ですか?
- ユージン
- 月額35万円です。2か月行った場合、70万円になります。
- 阪
- マイクロソフトの「魅力づけ」を、社員の皆様はインターンシップのなかでどのように意識されていますか?
- ユージン
-
それはカルチャーに近い部分です。人事主催で4日間のイベントを行うのですが、社員同士の距離感、例えば一般社員とトップ、一般社員と役職の高い人の関係性が非常に近いのです。その距離の近さをしっかり伝えます。
初めに意識的に、上下関係なく、寧ろ自分から動いても大丈夫であることを伝えることで、本人も「社長と話せるのであれば、誰とでも話せる」というマインドセットになります。そこの勇気を与えるために入り口で工夫はしています。
- 阪
- 学生が自分で起業して働くことと、企業に就職をすることの違いについて、社風の他に伝えていることはありますか?
- ユージン
- 社風とビジネスインパクトです。一度働くと、スケールの大きな仕事だというのが全面に見えるため、2か月でこんなに大きな仕事ができたと感じてもらうことは非常に大事です。
- 阪
- インターンシップ応募のハードルは設けられていますか?
- ユージン
- 弊社の場合、募集時期を3年生の4月〜9月の中で設けており、その時期にもう就職活動している人であれば特にハードルは設けていないです。ただし、書類選考時に特殊な自分のプロフィールページを作成するプロセスがあるため、それまでの経験や自分に自信がある人でないと、本選考には進めないと思います。
- 阪
- 志望動機をコピー&ペーストして書けるものではなく、一歩踏み込んだ書類選考の内容や設問を設けているのでしょうか。
- ユージン
- はい。そこでつまずいて、自分は違うかもと思う学生もいると思います。
- 阪
- インターンシップ未参加でも本選考に進む受入れ窓口はありますか?それともインターンシップやリファラル採用を重視しているのでしょうか。
- ユージン
- 実績ではインターン経験者と未参加の人は半々くらいです。特にインターンを本選考のオプションとしているため、最初から募集の仕方が本選考になっています。インターンに参加可能な方は参加いただきますが、必須ではありません。また、最終選考会の時には、インターンを経験された方とされてない方を全く同じ目線で改めて見る場を設けています。
- 阪
- インターンシップに未参加の場合は、留学や自身の研究、他社のインターンシンプに参加しているなど、その時期に何かに関わった経験を重視しているのでしょうか。
- ユージン
- そうです。弊社の場合は内定後でもインターンをする機会はあるため、無理に内定前でなくても良いのです。
- 阪
- 学生がジョブを選ぶのは、本選考の応募時、それとも配属のタイミングなのでしょうか。
- ユージン
- ちょうどその間くらいです。最終選考に臨むタイミングでオープンにします。「あなたに会っていただく面接官は、このジョブとこのジョブの人です」のといったかたちです。そこで初めて自分が選ばれたジョブが何であるかがわかり、その後最終選考を経て、最終確定したジョブを伝えます。
マイクロソフトの新卒採用について
- 阪
- 同じ新卒でもジョブが変われば、その報酬は同期でも違うのですか?
- ユージン
- そこは日本的な工夫をしています。開発系の職種は別の報酬体系ですが、いわゆる技術職や技術営業職、営業マーケティング職については全く同じ報酬でスタートしています。
- 阪
- 入社時は日本の新卒採用の扱い方に合わせ、その後は報酬の差や条件が変わってくるのでしょうか?
- ユージン
- 厳密に言うと入社3年目からそのジョブに応じたボーナススキームが変わってきて、そこで差がつき始めます。
- 阪
- まず採用の段階では、条件よりもポジションのイメージがついているか、やりたいことがあるかという点をマッチングさせていくかたちですか。
- ユージン
- やはり日本の学生にとって同期はすごく大事です。同期で報酬の違いがあること自体、自分としても違和感がありました。そうであればスタートラインは同じもので始め、そこからそれぞれの成長曲線を描いていく方が良いと思っています。
- 阪
- アメリカだとあまり同期という意識がないと聞きますが、日本ではそういう点も大事にしているのですね。
- ユージン
- そこはカルチャーによるものが大きいと思います。日本の同期カルチャーは入社後10年、20年ずっと続いていくものですので、そこをどれだけケアするかによってそのあとの集団としてのパフォーマンスが上がってくると私は信じているので、非常に意識しています。
- 阪
- 特に経理や法務のような職種に関してはジョブ型やコース別のイメージがつきやすいです。しかし、いわゆる事務系総合職(営業職、マーケティング職、企画職等)と言われる領域に関して、どうジョブを紐づけているのでしょうか。御社の場合も、ポテンシャル採用に近い見方をされているのですか?
- ユージン
- 最初は広めに職種をまとめたようなかたちで採用しています。営業マーケティングの中には6つくらい細かくジョブがありますが、それらを一つ一つ紹介はせず、ある程度まとめて募集します。応募者が書類を書いていく段階で、例えばその職種に必要なコンピテンシーのキーワードがあったときにできるだけその具体的な職種に人事がつないでいく機能を果たしています。
- 阪
- その場合、特に文系の学生に関しては経験値やスキルではなく、姿勢やその部署への取り組み方を面接で見極めているということですか?
- ユージン
- 仕事の理解とそれに近い経験を学生のうちにしていたかはプラスになります。反対に経験をしていても、マイクロソフトの中での仕事イメージが湧いていない場合、入ったあとにギャップが生まれてしまいます。「プレップ」と言っていますが、社員に会ってもらい、最終選考の前にできる限りクリアになるようにひとりひとりと向き合っています。
- 阪
- 選考を通過し、入社までの期間にどのような教育や内定者のフォローをされていますか。
- ユージン
- 事前に「プレップ」をしておくと自分が何を勉強したらいいのかより分かるため、全員一律で入社前には必ず1か月以上のインターンを経験してもらいます。サマーインターンを経験した方は、2回目は必須ではありません。
- 阪
- 入社前から知っている先輩社員や相談できる相手がいると、入社後「オンボーディング」しやすく安心感につながりますか?
- ユージン
- まさにそれがケアとして必要だと思っています。人事を介さず自分たちで直接マネージャーや周りの先輩に連絡を取れ、入社前から良い関係ができあがっていると、立ち上がりも良くなります。そのため、労力を惜しまずにできるだけ早めにやるようにしています。
- 阪
- 仕事を任せる側にも準備ができるという点もありますか。
- ユージン
- 1か月間でも、その人の特徴や情報が得られるので、上司もどういった育成プランを組んでいくかを考えやすくなると思います。
- 阪
- いただいた質問を読み上げます。「今テレワークの中で、面接や内定者向けの研修も全てオンラインで実践されているのですか?」
- ユージン
- インターンもフルリモートです。
- 阪
- 新入社員を受け入れる際、オンラインから始まることへのハードルがある中で、スムーズに実践できましたか?
- ユージン
- スムーズとは言い難いですが、以前から在宅勤務は日常的、且つ自社のツールもあり、テクノロジーとしては全く問題ありませんでした。それ以上に、「会社に行きたい」という方も一定数いる中で、我慢を強いられている状況なので、新卒に関わらずできるだけ早く出社できる状況になるといいと思っています。
- 阪
- 素敵なオフィスもあり、在宅勤務ではなく職場に行って働きたいと特に新卒の方は思いますよね。
- ユージン
- 新卒はいろんな人と接点を持ちたいのですが、オンラインで接点を持つのと顔を突き合わせて話すのでは、得られる情報量や感じ方に違いがあるため、そこはリアルも大事かと思います。
- 阪
- 選考や内定者に向けたフォローで、オンラインだからこそ、対面のときより気をつけているポイントはありますか?
- ユージン
-
面接は殆どマネージャーがみていますが、ネガティブな意見はなく、カメラが映らない機材トラブルといったレベルです。
マネージャーからのフィードバックとして良かった点は、その人と交流するだけでなく、フルリモートだからこそ、成果にこだわり資料を作り込む方が何人もいたということでした。
オフィスに行っていると自然と仕事は回り、時間が過ぎるのですが、フルリモートだからこそ、よりきちんと成果を出さなければいけないというマインドセットにこれからの新卒の人たちはなっていくだろうと思います。
- 阪
- 職場で気軽に話を聞きに行くことがでできない分、コミュニケーションの取り方や仕事をしているアピールに関しても工夫が必要になります。そこは面接だけでなく、職場においても同じような取り組みを皆さんが主導的にされている印象ですか?
- ユージン
- 仕事に対する姿勢が非常に良くなってきたというのは成果として挙げられると思います。
「ワークライフチョイス」という考え方
- 阪
- 入社後の選択ができる「ワークライフチョイス」という考え方についてお話しいただきたいです。
- ユージン
-
「ワークライフチョイス」
は実は以前の日本法人の社長が言い出したもので、私も共感する考え方です。ワークライフバランスではどうしても「ワーク」のほうに偏ってしまうのですが、「チョイス」と言えば、何か余裕を与えてくれると思っています。
会社にいる人生は、人によっては40〜50年くらいあると思うのですが、自分で選び、仕事に集中する時期もあれば、この時期はライフに集中するという時期もあっていいという会社の考え方
は私も好きです。今は特にコロナ禍で、「家族を大事にして、健康を第一に考える」とグローバルのトップからのメッセージがあるのですが、そういうことを言い続けることも良いカルチャーだと思っています。
- 阪
- 外資と言えば第一線で常に成果を上げ続ける必要があるイメージでしたが、個人が会社に対して選択できるのが非常に面白いと思いました。男性の育休取得率も高いとお伺いしたのですが、実際何パーセントくらいになるのですか?
- ユージン
-
半分以上ということはお伝えできると思います。
弊社の場合、男性の育休は8週間程度を有給としてとることができます。積極的に取っていただいておりますし、より長い期間を取る社員もいるため、ライフについても充実した制度が整っています。
ジョブ型導入にあたり考慮すべきことは
- 阪
-
視聴者の皆様の中では、今までの日本の雇用制度と新しくジョブ型を導入するにあたっての制度の乖離や、文化の違いをどう馴染ませていくのが良いのかについて関心が高いです。
ジョブ型で仕事をすることと日本の雇用制度との違いやメリットに関してどう感じますか?
- ユージン
-
ジョブ型は、良くも悪くもやらなきゃいけないことが決まっています。決まっている代わりに、それに対しての全責任を負っている(「アカウンタビリティ」と呼ぶ)のです。そのために、ジョブを全てひとりで回す能力も必要になります。その力を日本の通常の育成制度の中で身につけられる人はおそらく一握りです。特にジョブローテーションをすると3年おきに変わり、ある程度個々の仕事はできても、全責任をもってその仕事を回せる人材には育たないと自分の経験から感じています。
現在、様々な企業で入り口として始まっているのは、管理職の役割等級へのシフトです。それはひとつの手段としては良いのですが、社員のマインドセットはそれだけだとすぐには変わりません。よりジョブ型に近づけるには、まずは社員が自分の仕事を全て自分で回すマインドセットになるための仕掛けとして何ができるのかを考えることが重要です。
- 阪
-
ジョブを設定することで、会社の中で求められている役割や仕事の目標が明確になる点と、それをベースにして本人の志向性や能力に対して対話しやすくなると思っています。
ジョブがマッチした方にとってはステップアップしやすく、分かりやすい指標ですが、反対にマッチしない場合、その社員の取り扱いはどのようにしていらっしゃいますか?
- ユージン
-
弊社の場合は本当にシンプルに、「本当にこの会社で活躍いただくのがベストチョイスか。」といった会話をし、そこまでの成長速度を求めないような会社も沢山あるので、そこに行っていただくという選択もあると考えます。
ただ日本の場合、殆どはここのジョブが合わないから他の会社に行く場合でも失うものも大きいです。例えば、日本の雇用制度自体長くいるからこそ恩恵を受けられるといった点です。一方で、それがその人が成長しない要因になり、甘えになります。会社が自分のために何かやってくれて、自分が我慢をすればあとで良い夢がみられる、といった考え方になるような制度設計はこれからの時代に合ってくるのか疑問を感じます。
- 阪
- 自分自身が自分の能力を上司や周りの人も含めて、適切に判断や自己評価ができるようになり、自分自身で能動的にジョブを選択できる点は良いですね。
- ユージン
-
「能動的」というのが大事なキーワードでして、社員全員に「能動的であるべきだ」と打ち出すことがひとつのメッセージになると思います。
- 阪
- 日本の雇用制度にジョブ型を取り入れようとした時、ネックになるポイントや、考えて進むべきポイントはありますか?
- ユージン
-
殆どが気になります。「誰のためにやるか」が重要だと思います。本当に社員がそれでハッピーになるのかをきちんと考える必要があります。例えば新入社員がハッピーになるだけで、既存社員のモチベーションを下げるような改革はしない方が良いため、そこは悩んでいた時期があります。
ただし、既存社員も前向きになれるのであれば導入するメリットはあると考えます。みんなに対してハッピーというのはもちろん難しいのですが、前向きなメッセージや、メリットをセットで打ち出さなければいけないとは思います。
人事はよくやりがちなのですが、ただ報酬制度が変わりますといった説明会を暗いところでやってしまうとやはりモチベーションに関わってしまいます。経営幹部を含めて、前向きなパフォーマンスができるかどうかは、その制度を入れるときの成功につながる要因だと思います。
- 阪
-
日本の雇用制度は、年功序列で給料が上がっていくことや、役職の降格がなかなか難しい点がジョブ型との差異であると認識しています。求められているものをまず明確にして、正当に評価をつけて伸ばしていくというジョブ型のいいところから取り入れられると良いです。
また、学び方が欧米とは違うと感じています。欧米の就業に対するマインド、いつくらいからでき、取り組みが始まっているのでしょうか。
- ユージン
- 私も日本で教育を受けた期間が長いので感覚的ですが、イメージとして高校くらいからきちんと自分の仕事を見据えて、それに対して大学でその仕事に必ずつながるような学部に進んでいる印象が強いです。日本のように大学名で受けたりとか、会社名で受けたりというのはなく、大きくそこが違います。
- 阪
- 日本の文化や教育制度を鑑みて、今すぐに欧米のジョブ型インターンには簡単に移行できないと思うのですが、移行していくにはどうしていくべきなのでしょうか。
- ユージン
-
そこはキャリア教育です。日本の場合大学3年生から本格的に行いますが、それをもっと早くから行えば良いのです。またそこで、自分でやらなければいけないという考え方に切り替えてもらうことも重要だと思います。
例えば、様々な会社の人の話を聞き自分が活躍するイメージを持ってもらえるかどうかです。自分で実践している学生もいますが、大多数はまだ大学のうちは学業に専念する方が多いため、彼らに対して早めに、就業することは何かということ、自分に今何が足りないかをきちんと考えてもらう機会は増やした方が良いと思います。
- 阪
-
就職と学業を切り離すのではなく、学業の延長に働くことがつながっていくインターンの実施や学び方ができれば良いですね。
実際、アクティブな学生やDX人材と言われ期待ができる学生が日本にいるのかという点では、体感値としてはいかがですか?
- ユージン
-
弊社を受けてくる学生だけでいうと増えていると感じています。それらに関係する会社がベンチャーを含めて増えているのと、彼らの受け入れ先が、弊社や一部の外資企業になって上手く今の時点ではつながっているのではないかと思います。
DX人材の定義が難しいですが、お客様のことが分かり、ITの力を使ってより良くできるかを考えられる人材という意味では、入社前でなくても入社してからも鍛えられる能力だと思います。そういう人材はこれからも増やしていきたいです。
- 阪
-
そういった学生の応募につなげるために、インターンシップとジョブを結びつけて魅力づけができるかに取り組まれているのですね。
では、お時間も残り少なくなってまいりましたので、最後にユージンさんからメッセージをいただきトークセッションを終わりといたします。
- ユージン
-
ジョブ型を中心に話をしてきましたが、少しでも何かお役に立つヒントがあれば非常に嬉しいです。こういったものは人事主導で仕掛けるのではなく、ビジネスを大きく転換・変革しなければいけないときに、違うタイプの人材を連れて来る必要がある場合などです。そういった場合に、例えば中途で特別なチームを作ったり、新卒をこれから違う人材に変えていくために制度を取り入れたりと、ビジネスアジェンダと一緒に考えていくべきものです。
そのなかのひとつのオプションとしてジョブ型を試してみるのが良いと思います。その時の学生や社員の方のケアは人事として非常に重要な仕事であり、そこをきちんとしていくことで成功につながると思っています。本日はどうもありがとうございました。
- 阪
- ありがとうございました。
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