近年、テクノロジー技術の発展やIT需要の高まりに伴い、
大学で高い専門性を身に付けた〈理系・情報系学生〉の採用に注力する企業は増加。
一方で、理系学部への進学を選択する学生は年々減少し、IT系人材も顕著な人手不足が懸念されています。
このような背景で、彼らの採用に苦戦を強いられている採用担当者も多いのではないでしょうか?
本記事では、新卒採用でも特に採用難度の高い〈理系・情報系学生〉に焦点を当て、
(株)ワークス・ジャパンの調査データを用いながら、24卒学生の就活傾向、企業の採用課題などを解説。
また、彼らの採用に注力している企業2社をお招きし、【WORKS REVIEW】を実施しました。
実際に取り組まれている、採用の「施策事例」「心得」についてレビューします!
INDEX
- 高まる採用需要
- スケジュール早期化 & 厳選応募 (24卒学生就職活動振り返り調査)
- 25卒も続く傾向、新たな施策を (25卒学生インターンシップ意識調査)
- 課題感1: 内々定後に辞退される
- 課題感2: 母集団が確保できない
最近の〈理系・情報系学生〉の傾向は?
高まる採用需要
そもそも理系・情報系学生の採用需要が高まる背景には、次のような要因があると考えられます。
- 少子高齢化に伴う労働人口の減少 ※
- 理系学部に進学する学生の減少 ※
- 企業のDX 戦略の推進
- 専門性が高く即戦力として期待できる
- 急速なテクノロジー発展
- IT需要の高まり
このように新卒採用において理系・情報系学生の需要が高まった要因として、少子高齢化に伴う労働人口の減少や理系学部に進学する学生の減少に反して急速なテクノロジー発展・企業のDX化等の動きが挙げられます。
中途採用市場においても高い専門性を有する人材が少ないこと、さらには育成に時間がかかること等から、
学生のうちから高いテクノロジー知見を有している理系・情報系学生に注目が集まるようになりました
※参照データ: 文部科学省『理工系人材育成戦略』(平成27年3月13日)[PDF]
スケジュール早期化 & 厳選応募【24卒学生就職活動振り返り調査】
POINT 1 スケジュールの早期化
(株)ワークス・ジャパンが行った『24卒学生の就職活動における意識調査』において、「企業の採用選考に参加した時期」を問う設問では、「12~1 月」参加の数は昨年度同調査と逆転し、「3 月」参加の数を上回る結果に。企業の選考前倒しの動きが学生の動向に大きく影響している様子が伺えました。
さらに、「入社予定先との最初の接点」を問う設問では、理系学生の約60%が「3年生の夏以前に接点を持った」と回答。
多くの理系学生が志望度の高い企業と早期にコンタクトを図っていることも分かりました。
POINT 2 本エントリーの厳選応募
また「本エントリー社数」が「20 社」を下回る学生は 7 割ほどであり、前年度と比較すると大幅に減少しています。
企業を厳選した上でエントリーに至る様子は、タイパを重視するZ世代の特性ともリンクしていると言えるでしょう。
上記内容を掲載している、24卒学生調査資料の詳細はこちらからご覧ください
≫ 『2023.06実施|24卒学生対象 就職活動調査』 詳細ページ
25卒も続く傾向、新たな施策を【25卒学生インターンシップ意識調査】
今後は24卒学生の本エントリー減少に続き、「25卒学生のインターン参加予定社数も減少する可能性が高い」ことが調査結果から見受けられます。まず企業は、学生との接点機会が減少している実情を知ることが肝要です。
どのように理系・情報系学生との接点機会を設けていくのか。さらには、どのように母集団形成につなげていくのか。
これらを戦略的に採用活動に落とし込んでいくことが求められてくるでしょう。
一方で、スカウトサービスを利用した24卒学生は約半数おり、年々増加の一途を辿っています。
業界への興味があればエントリーに至る確率が高いため、自分の専門性を活かせる職を希望する傾向の強い理系・情報系学生には有効的な採用手法と言えるでしょう。
上記内容を掲載している、25卒学生調査資料の詳細はこちらからご覧ください
≫ 『2023.05実施|25卒学生対象 インターンシップ意識調査』 詳細ページ
24卒採用で感じた “企業の課題感” 【企業対象24卒採用活動調査】
企業への24卒振り返り調査を実施した結果、「注力した施策と課題感」として上位に挙がったのは以下2つでした。
課題感 1 内々定後に辞退される
調査の結果、「内々定後の辞退」を課題視する企業は50%にも上りました。
スケジュール早期化による各社の採用スケジュールのばらつき、ネームバリューや規模感、
配属確約できない等、様々な要因が内々定後のつなぎ止めに影響していると考えられます。
課題感 2 母集団が確保できない
24卒では学生が応募企業を厳選していることもあり、学生1人あたりの本エントリー数が減少しています。
学生の動向が企業の母集団形成にも大きく影響し、「母集団が確保できない」と回答する企業が多くなったと推察できます。
24卒採用において理系・情報系学生の採用に苦戦した企業は、
これらの課題に向き合いながら新たな採用戦略・施策を模索していく必要があるでしょう。
上記内容を掲載している、企業の24卒採用活動の振り返り資料の詳細はこちらからご覧ください
≫ 『2023.06実施|企業対象 採用活動調査』 詳細ページ
▼ WORKS REVIEW 実施内容 ▼
理系・情報系学生の獲得に役立つ「施策実例」と「心得」
学生の動向、意向が企業の採用活動に大きな影響を与える新卒採用では、まず他社の取り組み事例を知ることが成功への近道。
そこで、理系・情報系学生の採用に注力している企業2社、「キヤノンマーケティングジャパン株式会社」「三井住友カード株式会社」の新卒採用ご担当者様をお招きし、WORKS REVIEW を実施。
多くの企業が抱える採用課題でもある、「母集団形成」「学生とのエンゲージメントを高める施策」の観点から、
実際に取り組まれた採用施策についてご紹介いただきました。
※出演者情報はセミナー開催時点(2023年7月28日)のものです。
出演者
キヤノンマーケティングジャパン
株式会社
総務・人事本部
グループ人材開発センター
採用課
天本 義也 氏
三井住友カード株式会社
人事部
楠田 奨磨 氏
2017年に新卒で入社後、コールセンター業務に従事。
その後、一貫して新卒採用を担当し、現在は新卒採用のチームリーダー。
業務範囲はデジタル人材向けのインターンの企画や採用戦略の立案など多岐に亘る。
母集団形成施策①|キヤノンマーケティングジャパン様
現在、6人のメンバーで営業・事務系100名、技術系30名の採用に取り組む。理系・情報系学生の母集団形成施策としては、主に「メタバース説明会」「スカウトサービスの活用」「大学訪問」の3つを実施。
- 天本
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メタバース説明会
新型コロナウイルスの影響でオンラインが定着する中、目新しさを求めメタバース形式のイベントを実施しました。メタバース空間上では学生が自身の分身となるアバターを操作し、各ブースを歩き回ります。
当社では理系学生に向けてソリューション事例を多数公開し、業務理解を深めてもらうことを意識しました。さらにクリックすると社員とライブのトークセッションを開始できるブースも設置し、個別に対話できる機会を作りました。3月の初旬に実施しましたが現在はアーカイブを残し、プレエントリーしてくれた学生にも各展示ブースを閲覧してもらえるようにしています。
- 天本
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ナビ媒体機能のスカウトサービスを活用
また当社では、秋冬のインターンシップにつなげる施策として、ナビ媒体の機能の1つであるスカウトサービスを活用しています。前もってスカウトサービス経由でインターンシップへの誘引を行い、インターンシップに参加してくれた学生にはリクルーターを付け本選考まで繋ぎ留める。このように学生との接触は、“点”ではなく“線”を描くことを意識しています。
またフィールドエンジニアとして採用したい学生へのスカウトでは、候補学生1人ひとりのプロフィールを確認し、「どのような点が当社にマッチするのか」をしっかり記載するようにしています。他にも『気になる』等の機能を活用し、少しでも学生からの反応があれば、インターンシップ誘致につなげています。
インターンシップの予定がない時には、少人数制の説明会を案内していますね。スカウトからの次のステップをきちんと用意し、学生との接触機会を逃さないことも大切にしています。
- 天本
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大学訪問
当社では、大学訪問も理系・情報系学生の母集団形成において重要な施策になっています。数自体は多くはありませんが、毎年入社がある学校には必ず足を運ぶようにしていますね。また大学訪問の際は、理系人材が配属される部門のメンバーにも協力してもらい、自身の出身校に訪問してもらうこともあります。
当社の場合、社名に“キヤノン”と名が付くものの“マーケティング”という言葉によって営業色が強い企業と認知されているケースも珍しくありません。理系・情報系学生からの認知が低いことも、母集団形成において課題の1つと捉えています。そのため認知拡大に向けて特に太いパイプを形成できている大学には訪問を継続し、関係性を高めていくことが必須だと考えています。加えて、現在は寄付講座として授業を実施させていただいている大学が複数あります。
このように理系学生と直接的な接点を自然に持てる機会にも、認知拡大や延いては母集団形成にも有効な施策ではないかと注目しています。そのため学校訪問では、2年生や3年生の理系・情報系学生に対し、自然な接点を持てる機会を探る・作ることも意識しながら取り組んでいます。
母集団形成施策②|三井住友カード様
[オープンコース][デジタル&マーケティングコース]の2コースを用意し、計180名の採用を目標に掲げ、採用活動に取り組む。理系・情報系学生に対しては、自社を選択肢の1つとして認知してもらうことを目的に「広告施策」を実施。
さらに「ダイレクトリクルーティングサービス」を活用し、学生1人ひとりに対しアプローチを行う。
- 楠田
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広告施策
当社では自社オウンドメディアとは別に、多くの大学生が利用するSNSを用いて情報を発信し、理系・情報系学生との偶発的な接点を創出するようにしています。
特に我々キャッシュレス業界は、そもそも理系・情報系学生の就職先として選択肢に入っていないケースが大半です。そのような状況下においては、企業側が偶発的な接点を創出しない限り、学生に気付いてもらえず終わってしまうでしょう。
5~6年ほど前からInstagramとLINEで新卒採用アカウントを作成しました。各メディアでは若手社員や内定者へのインタビュー、事業の取り組み等の写真・動画を発信しており、マイページへの登録につなげています。
- 楠田
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ダイレクトリクルーティングサービスの活用
ダイレクトリクルーティングでは効果を最大化させるため、我々ならではの訴求軸を明確にし、自社の魅力をしっかりと文字に起こすようにしています。
学生1人ひとりのレジュメを拝見し、“何に対し共感できたのか”に触れることはもちろん、「どのような経験が得られるのか」「どのようなキャリアを歩めるのか」など我々独自の観点を盛り込むことも意識していますね。
「三井住友カードって他の会社とは違う感じがする」まずはそんなレベルでもいいと思っています。学生にちょっとした変化や他社との差異を感じ取ってもらえるような文面になるよう工夫することで、学生の琴線に触れ、エントリーにつながっていくと考えています。
エンゲージメントを高める施策①|キヤノンマーケティングジャパン様
学生のエンゲージメントを高めるために、「リクルーティングアンバサダー制度」「インターンシップ最終日の振り返りムービーの制作」の2つの施策に取り組んでいる。
- 天本
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リクルーティングアンバサダー制度
リクルーティングアンバサダー制度は、去年から全社で行っている取り組みです。業務の傍ら採用活動に協力してくれる社員をアンバサダーとして募った結果、初年度は若手社員を中心に24人の社員が手を挙げてくれました。うち9人が理系学部出身です。
理系学生から社員と話をしたいと希望があった際、すぐに社員をアサインできるようになりましたね。これまでは上司や部門に許可を取らなければなりませんでした。しかしリクルーティングアンバサダー制度を実施してからは、すぐにアサイン予定の社員とアポが取れるようになり、採用活動も円滑化しました。
また理系学生に対してもスピード感のあるきめ細かい対応ができるようになり、学生のエンゲージメントも高められているのではないかと感じています。
協力してくれる社員には「学生に自社の魅力を伝えるということは、自分にも返ってくる」と伝えています。インセンティブなどは設けていませんが、会社の代表として活動する機会の提供は、社員のエンゲージメント向上にも良い影響を与えていると思いますね。
- 天本
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インターンシップ最終日の振り返りムービー制作
また当社では、インターンシップの最終日にサプライズ演出として『振り返りムービー』を制作・放映しています。インターンシップ初日の自己紹介やワークでの様子をカメラなどで撮影し、5~6分程のムービーに仕上げていますが、学生もインターンシップ中に撮影した写真が振り返りムービーに使われるなんて想定していないのではないかなと。
少しでも「この会社良いかもしれない」と感じ、記憶に残ってくれたら嬉しいですね。また私たちとしても、“次もまた会いましょう”という気持ちを込めてムービーを制作しています。
エンゲージメントを高める施策②|三井住友カード様
学生のエンゲージメントを高めるため、「インターンシップで志望度を醸成」すること、「学生とのコミュニケーションを戦略的に設計」することに注力。
- 楠田
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インターンシップで志望度醸成
我々自身がインターンシップの価値を理解した上で実施すること。それが学生のエンゲージメント向上に寄与すると考えています。
我々はインターンシップ後のフォローにもまだまだ課題が残ると感じています。一方で、インターンシップに参加してくれた学生が入社に至るケースは毎年続いています。このことからも、学生が “本当にその企業に就職したいのか?”を決定付けるフェーズとして、インターンシップが極めて重要になっていると捉えています。
インターンシップ自体をより魅力的な内容にブラッシュアップしていかなければ、どれだけダイレクトリクルーティング等でエントリーを募れたとしても結局採用にまでは至りません。どれだけ独自性高いインターンシップに作り上げられるのか、どれだけ採用競合と違う魅力を付加できるのかが、エンゲージメントの向上において重要な要素になるでしょう。
そのためアンケートなどを用いて学生の声に耳を傾け、都度微修正を加えながらアジャストしています。
- 楠田
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コミュニケーション戦略の設計
もう一つはコミュニケーション戦略の設計です。“点”ではなく、“線”を描くコミュニケーションを意識しています。
新卒採用の場合、マイぺ―ジ登録から本選考まで約1年の期間があります。1年という期間の中でどれだけ彼らと接点機会を設けられているのかを可視化しています。その上で我々は、「こういう時には、こういう会話をしていこう」「こういう時には、この角度からアプローチしてみよう」等、どのような接点を持ち、どのようなコミュニケーションができるのかをしっかり設計していくよう心がけています。
さらに近年の理系学生は、自分の経験やスキルがどのように活かせるのかといったジョブを中心に企業を選ぶ傾向があります。そんな理系学生の動向に沿いながら、学生時代の学びが当社でどう活きるのか。さらには何が得られるのか等、ジョブベースでのコミュニケーションを形成している点も工夫している部分になるかと思っています。
採用施策のより詳しい内容は「アーカイブ配信」で!
当日お話しいただいたWORKS REVIEWの動画をアーカイブで配信しています。
本記事で紹介しきれなかった内容もありますので、こちらよりぜひご覧ください。
【WORKS REVIEW|【特集】企業が語る理系、情報系学生を獲得するための心得】(2023.07.28実施)
≫ アーカイブ配信はこちら
また、本記事で紹介した調査資料には、紹介しきれなかった学生の就活傾向、企業の採用情報について多数掲載しています。24卒振り返り、25卒動向分析に役立つこと間違いなしです。ぜひご活用ください!
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2004年 新卒入社 @東京勤務人事本部配属(試験制度運用・安全衛生担当)
2009年 キヤノン中国(北京)へ赴任(出向者人事管理、ローカル人事制度企画)
2012年 帰任 国内グループ会社人事(2社)
2020年 採用課(現職)(新卒採用、キャリア採用)