対面回帰の傾向が強く見られた25卒採用。ポストコロナに移り変わる中、学生と直接コミュニケーションを図れる機会が増えた一方で、就職活動に取り組む学生の動向はタイパを意識して縮小傾向に。
採用目標人数達成のための母集団形成に注力することはもちろん、インターンシップから内定に繋げる導線設計の他、早期に内定を出した学生とのグリップ形成やフォローも重視されるようになりました。
今回は「大林組様」「積水化学工業様」をゲストにお招きして、【WORKS REVIEW】を実施。
採用活動が長期化する中、
限られたマンパワーで「タイパ」を意識する学生をどうグリップし、内定・入社へと繋げていけるか?
アフターコロナにおいて、学生のリテンションを高める採用手法についてレビューします!
INDEX
◆ データから紐解く 25卒市場動向
- 「タイパ」重視の就職活動|学生傾向
- 顕著に表れた「選考時期の前倒し」|企業傾向
◆ タイパ重視の学生をいかにグリップしていくか 【WORKS REVIEW 実施内容】
- 夏インターンシップ参加者の「グリップ強化」に向けて
- 各社のリクルーター活動・成果
- 長期化する採用活動における、内定後のつなぎ止め施策
- タイパ重視の学生とのコミュニケーションの取り方
◆ 総括
◆ データから紐解く 25卒市場動向
「タイパ」重視の就職活動|学生傾向
(株)ワークス・ジャパンが行った『就活生の意識のトレンド予測』では、学生がインターンシップに参加する時期は8月・9月がピークとなり、10月以降は本選考に注力する様子が見て取れます。
またインターンシップ参加企業を絞る学生も増えており、学生とコンタクトを図りにくいマーケット状況でした。さらに内容に合わせて対面とオンラインを使い分けてエントリーしており、効率的に活動している様子は、タイパを重視する今時の学生らしい動向と言えそうです。
他にも、企業のリアルを知る「業務体験型」の開催内容に高い満足度を示している学生が多い結果となりました。「入社後どのような活躍ができるのか」「どのような職場で働くのか」といった学生の不安や好奇心を満たした点に、高い評価が付いたと推測されます。
企業としては、オンライン・対面それぞれに求められる情報を整理し、ターゲットや時期に合わせてイベント形式を使い分けていく柔軟な対応を意識する必要があるでしょう。
【25卒学生対象|インターンシップ意識調査資料】
上記内容を掲載している、25卒学生インターンシップ意識調査資料の詳細はこちらからご覧ください。
≫ 『2023.05実施|25卒学生対象 インターンシップ意識調査』 詳細ページ
顕著に表れた「選考時期の前倒し」|企業傾向
(株)ワークス・ジャパンが企業に対して行った『採用活動調査』では、3割以上もの企業が12月から選考を開始するスケジュールを組んでいることが分かりました。
また内々定出しの開始も4割以上の企業がプレ期である2月までに開始する予定であり、24卒採用と比較してスケジュールの前倒しは進行していく傾向が見て取れます。
採用スケジュールを前倒しにすることで他社よりも早く学生と接触を図れる一方で、以前よりも学生と関わる期間は長くなります。そのため各フェーズにおける学生とのコミュニケーション方法や、内定・入社まで学生の気持ちを繋ぎ留めていく施策がより重要になってくると言えるでしょう。
【企業対象|24卒採用活動調査資料】
上記内容を掲載している、企業の24卒採用活動の振り返り資料の詳細はこちらからご覧ください。
≫ 『2023.06実施|企業対象 採用活動調査』 詳細ページ
◆ WORKS REVIEW 実施内容
タイパ重視の学生をいかにグリップしていくか
~ゼネコン×メーカーと考える2025採用展望~
タイパ重視・就活縮小化傾向にある学生と向き合うためには、組織全体で採用活動に取り組んでいく姿勢が必要です。その試みの1つとしてリクルーター活動に注力する企業も少なくないでしょう。
今回は「株式会社大林組」「積水化学工業株式会社」の新卒採用ご担当者様をお招きして、オンラインセミナーを実施。
25卒採用で実際に取り組まれている採用施策の他、学生のリテンションを上げるためのリクルーター活用施策、タイパ重視の学生とのコミュニケーションの考え方についてご紹介いただきました。
※出演者情報はセミナー開催時点(2023年10月20日)のものです。
出演者
株式会社大林組
人事部
根本 一哉 氏
積水化学工業株式会社
人事部 人材マネジメントグループ
里見 浩一郎 氏
2016年に自動車部品メーカーに新卒入社。品質保証部門に初期配属。2018年に人事部門に異動後、一貫して採用業務に従事(新卒採用3.5年、キャリア採用1.5年)。採用計画から実行まで一貫して携わる。
2023年7月に新卒採用担当として積水化学工業に入社。全社採用戦略の企画から実行まで幅広く担当。
夏インターンシップ参加者の「グリップ強化」に向けて
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大林組
根本 -
◆夏IS概要|大林組
事務系・技術系 計300名の採用に取り組む。夏インターンシップは、対面での実施が中心となっており、技術系のイベントは全て対面にて実施。事務系においても対面とオンラインの選択制を取り、業界や職種の理解が深まるコンテンツを実施した。
◆夏IS後は、企業理解を深める「イベント」と「OB訪問」でグリップ
事務系に関しては昨年と同程度の応募数でしたが、技術系は長期インターンシップが主流になってきたこともあり、学生の日程確保に難儀しました。当社のインターンシップに興味を示してくれていた学生であったとしても最終的に他社のインターンシップを選択することも多く、売り手市場を実感しましたね。
また私たちが就職活動に取り組んだ10年ほど前とは違い、「どんな仕事をするのか」「どんな環境で働くのか」といったところをすごく気にしている学生が多いように思います。特に初期配属についてのご質問を頂く機会も多くありました。
そこで秋にも建設現場の見学や本社のオフィスツアーといった、夏とは違う角度から会社の理解を深めてもらえるようなイベントを実施しました。自分が働くことになる現場を実際に見ることで、入社後の姿を想像しやすくなると学生から好評を頂いています。
またプレ期で接点を持った学生にはリクルーターを活用したOB訪問を実施し、選考に繋がるようアプローチしています。
- 積水化学工業・里見
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◆夏IS概要|積水化学工業
100~200名の採用に取り組む。夏インターンシップは、体験ワーク・座談会をオンラインにて実施する一方、職種体験や工場見学などは採用難度の高い機電系や電気・情報系の学生に限定し対面にて開催。
◆夏IS参加者に早期選考を実施
今年は早い時期からインターンシップの募集をかけたこともあり、昨年度よりも応募数が増え、かつ当社にマッチングする学生に出会えたと感じています。
また早期から興味を持ってくれた夏インターンシップ参加学生に対しては早期選考を実施しており、他社よりも少し早い1月末には内定を出せるスケジュール感で選考を進めています。
また当社は内定出しをした後で、しっかりと学生と良い関係性を築いていくスタイルを取っています。ただ内定出しまでの期間においても、先輩社員との座談会や現場理解のための情報提供などを通して、学生のグリップを意識した採用活動を進めるようにしていますね。
各社のリクルーター活動・成果
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大林組
根本 -
◆リクルーターは、学生の本音を引き出す立役者
リクルーターには先輩社員として座談会に参加してもらう他、同じ出身大学の学生と面談を実施し評価を付けて頂くことをお願いしています。
活動においては、コンプライアンス的な教育は実施していますが、学生への働きかけに特段規定を定めていません。リクルーター同士で制度をブラッシュアップしているところもあり、社員に支えられている部分でもありますね。最近ではコロナをきっかけにオンライン活用が活性化したこともあり、地方にいるリクルーターも活動できるようになりました。
また学生のアンケートなどを見ると、「自分の上司・先輩になる人の話を聞きたい」「今まさに現場で働く人から話を聞きたい」という心情をひしひしと感じます。そのような意向に対するリクルーターの活躍は、学生をグリップする施策として十分に効果を発揮していると感じます。
実際に人事担当者とリクルーターとでは、学生の構え方も違います。人事担当者では聞けなかった学生の本音をリクルーターが聞き出してくれることもあり、両輪で走っています。
- 積水化学工業・里見
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◆数年ぶりにリクルーター活動を再開
当社では新型コロナウイルス蔓延を機にリクルーター活動を一時中断しており、25卒採用で数年ぶりに活動を再開しました。
リクルーターとして活動している社員は15名ほどおり、採用に苦戦している機電系や電気・情報系出身の社員に、出身研究室に訪問して会社説明等を行ってもらっています。また、上述のリクルーターとは別で、先輩社員座談会や研究所見学などの場で協力してもらう社員もいます。
ただリクルーターへの教育という点においてはまだ体制が整っていないこともあり、今後に課題が残ります。一方で「学生と話すことで新鮮な気持ちになった」「夢を持っている学生が多く刺激を受けた」など、リクルーター社員からポジティブな意見を聞くことも多く、来年度に向けては規模を拡大させていきたいと考えています。
長期化する採用活動における、内定後のつなぎ止め施策
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大林組
根本 -
◆学生の興味関心に応えるイベント
内定学生へのフォローとしては、毎月1回のペースでイベントを実施しています。
新入社員の配属先となる部署の業務説明や先輩社員との座談会、配属部署を決める個人面談など、学生の興味・関心に応えるコンテンツが中心です。
単に内定者として相対するのではなく、入社するまでのステップを少しずつ踏んでもらうイメージでフォローを実施していますね。
- 積水化学工業・里見
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◆働く現場のリアルを知るイベント
当社でもカンパニー別にはなりますが、内定者イベントを毎月1回ペースで実施しています。
事業内容や働く現場のリアルを知ってもらうことを目的に、研究所の見学・先輩社員の座談会・内定者同士のワークショップなどのコンテンツを設けています。
タイパ重視の学生とのコミュニケーションの取り方
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大林組
根本 -
◆接触のバランスを意識した情報提供・フィードバック
学生とのコミュニケーションの取り方は、私たちの悩みの1つです。
「一般的なフォロー施策である電話・面談は、タイパを重視する今時の学生にも有効なのか?」と悩むこともあります。
学生からしつこいと思われないバランスを意識しつつも、学生1人ひとり受け止め方は異なります。もちろん、各学生の意向に合わせて対応を変えるべきではありますが、採用人数に対して臨機応変な対応を取るとなると実際難しいところがありますね。
ただ、イベントなどで学生と接する中でフィードバックを大切にしている方が多い印象を受けています。内定者に向けたアンケートでも、「面接後にフィードバックをもらえた点が良かった」という意見もありました。そのため学生と接する時は、学生の求める情報提供やフィードバックなどを意識的に行うようにしています。
- 積水化学工業・里見
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◆イベント情報の「事前開示」で積極的な学生と出会う
学生とのコミュニケーションで意識している点は、イベントの実施時期や詳細を「事前開示」することです。
事前の告知・宣伝を行うことで1種のフィルタリングが寄与し、その情報を求めている学生から反応をもらうかたちでコミュニケーションをとっています。
またタイパ学生を意識した施策として、フィードバック面談を手厚く実施しています。直接対話をする中で見えてくる「学生が求めている情報」に対して、細やかに伝えていくことを心がけていますね。
総括
25卒採用においては、採用スケジュールが前倒しとなり活動が長期化する一方で、学生の就職活動は縮小傾向にあります。その中で企業は、タイパを重視する学生の意向を汲んだオンラインと対面の使い分けや、入社に至るまでの長い期間学生をグリップする施策を考えていかなければなりません。
その中で、人事担当者だけで数多くのエントリー者の本音を探り、気持ちを繋ぎ留めていくことは至難の業です。
組織全体で採用に取り組む姿勢が求められる今。
タイパ重視の学生をグリップし、各フェーズにおけるリテンションを強化するためには、
イベント情報の「事前示」で自社とのコミュニケーションに積極的な学生を募り、
人事とリクルーターが協力して学生をフォローすること
が、ポストコロナにおける採用活動の最適解の1つかもしれません。
本記事が、学生とのコミュニケーション・グリップに悩む企業・人事ご担当者様の参考になれば幸いです。
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2015年に株式会社大林組に新卒入社。
四国支店総務部において、総務業務・経理業務を担当。
その後、四国支店管轄内の建築現場・東京本店管轄内建築現場において現場事務業務に従事。
2023年5月より人事部にて新卒採用を担当。